半導体  微細化の落とし穴
中性子線でLSI機能障害  医療機器など影響

フジサンケイ ビジネスアイ

2004年5月25日

大気圏で発生する高エネルギーの中性子の影響で一部のLSI(大規模集積回路)を搭載した電子機器やシステムに不具合が起きる確率が高まっている。LSIに用いられる半導体の微細化で低電圧化が進み、地上に降り注ぐ中性子の衝突で電圧が上昇しプログラムが破壊され、機能障害を起こすという。LSIは、誤動作を許されない通信システムや車載エアバッグ、医療機器などに多く搭載されており、深刻な問題が生じる懸念も強まっている。

米半導体大手のアクテル(カリフォルニア州)が半導体のエラー試験の中立機関であるiRoCテクノロジーズに依頼。2000年2月に米ロスアラモス国立研究所で行った1時間ごとに10個中性子が落下してくる海抜0メートル地域という条件で、エラー発生の確率を計測する実証試験でわかった。

試験の結果、利用者がプログラムを書き換えられるLSIの「FPGA」のなかで、「SRAM」と呼ばれるプログラムなどの格納領域である半導体メモリーを使ったものにエラーが数多く発生し不具合が出た。

これまで同種のFPGAは、中性子の数が非常に多くSRAMへの衝突可能性が高い高度9000メートル以上の高高度で、中性子の衝突によりメモリー内のプログラムが破壊され、機能障害を起こすことは確認されていた。

不具合の最大の要因はSRAMの微細化。半導体回路の線幅の極小化により熱の発生を抑制する目的から動作電圧が、数年前の5ボルトから1.2ボルトまで急速に低電圧化。このため高度地域よりもはるかに中性子が少ない地上でも、SRAMへの衝突による電圧の上昇でプログラムの破壊が起きやすくなっていることが確認された。

SRAM活用のFPGAでは米ザイリンクスと米アルテラが二大メーカー。両者のFPGAは頻繁なプログラムの変更を求められる通信システム向けで5割以上を出荷。加えて医療機器やエアバッグ、情報格納に必要なデータ記憶装置(ストレージ)にも国内外で数多く用いられているという。今回の結果から、同FPGAを搭載した電子機器やシステムが中性子に対して非常に脆弱であることが露呈した。

備考 :
高高度で発生する中性子線
太陽などから地球に飛来する放射線の宇宙線が大気に突入して、空気中の気体分子に衝突すると高速の中性子線が発生し、地上に降り注ぐ。これまでの半導体は中性子線の影響を受けるほど微細化されていなかったが、数十ナノ(1ナノは10億分の1)メートルから10ナノ メートルを切る配線の太さになると、中性子線のダメージを受け、半導体部品が機能停止を起こす可能性が指摘されている。

FPGA
「フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ」の略で一種のLSI。コンピューターメーカーなどLSIのユーザー側でプログラムを書き込むことができる。機能を自由に再設定できるため、リセットすることで何度も内容を定義し直せる利点がある。LSI製造後にユーザーがプログラムを書き込むため、LSI自体は開発・製造の初期費用を削減できる。米ザイリンクスがはじめて製品化した。

SRAM
「スタティック・ランダム・アクセス・メモリー」の略で「エスラム」と読む。プログラムなどを記憶させる半導体電子部品の一種。一定時間内にプログラムの再書き込みが必要なDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)に対して、SRAMは再書き込みがいらない。このためDRAMと比較して使いやすく低消費電力が実現しやすいことからマイコンや携帯端末などに使われている。